「かく運命の戸をたたく」と最初の4つの音に説明を自ら加えたというベートーベンの作品は、日本人に彼の作品の中で「エリーゼのために」と同様最も知られている交響曲第5番「運命」の第1楽章の冒頭の音符です。

 音符を並べ、そこにリズムやハーモニーを加え旋律にする。そこから様々な色や物語を作る。作曲家は音を用いて楽曲にすることで、あらゆる想いやメッセージを表現し、聴衆や演奏者とのコミュニケーションを図ろうとしたようです。

 実は先日「Anima」(キングレコード)というアルバムを発表しました。運命やドボルザークの新世界を私のフルートでラテンやボサノバにアレンジし、新しい私の世界を表現した作品ですが、もうひとつ新しい試みとして初めての作曲に挑戦してみました。

 それは、ミステリー小説家の斉藤 栄先生の「湘南太平記」(徳間文庫)のイメージ曲として書かせていただいたものです。江戸時代の鎌倉にある腰越が舞台で、儚い恋が描かれているこの作品の文脈からうけた印象を旋律にかえてみました。

 鎌倉の海、山、大地、風に加え人間の心情を音符にしフルートで表現してみました。「脳裏に音符が駆け巡る」こんな経験をしました。作曲って難しい。けど、ちょっと魅力的。