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3つ前のこのブログでもご案内した
『都筑アートプロジェクト2011 ニュータウン・ドリーミング〜遺跡とアート〜』
港北ニュータウンの中心部に位置する 大塚・歳勝土遺跡公園 と都筑民家園を舞台に、アーティストと市民との積極的な関わりによって生み出される地域連携のアートプロジェクトで、今年で6年目の開催になるのだそうです。

このプロジェクトの話を最初に聴いたときから、弥生~古墳~江戸の史跡の残る環境で、古代から現代そして未来へとつながる悠久の時の流れを背景に、参加するアーティストの皆さんはどんな活動を繰り広げられるのか…すごく関心を抱いていたのですが、参加作家の一人、今井紀彰さんの「私は縦穴式住居に金色のヘビを核燃料棒に見立てた発電所をつくりました。高台で気持ちのいいところです。ぜひ遊びにきてください。」というFacebookでの呼びかけに、さらに興味をそそられて、展覧会も始まって間もない平日の午後、さっそく訪ねてみました。

初めて訪ねた大塚・歳勝土遺跡公園、こんもりとした森に覆われた丘陵地帯で、まず入口がわからなくてずいぶん迷ってしまい、やや焦り気味だったのですが、やっと公園内に足を踏み入れると、平日の夕方とあって人影もまばらでとても静か。風が竹林や木々を揺らす葉ずれの音がさやさやと心地よく聴こえてきて、丘を登りながら古墳のまわりの作品たちをひとわたり眺め歩いていると、すうっと気持ちが落ち着いて…この丘全体から優しく見守られているような、とてもいい氣を感じました。

わくわくしながら、今井さんの作品『ひみつのちから・パワーステーション』の設置された竪穴式住居の入り口をくぐると…

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言葉も出ないほどの衝撃を受けました。

「…金色のヘビを核燃料棒に見立てた…」という言葉を受けて、紫外線をあてると蛍光の黄色~黄緑色に光って見える天然のウラン鉱石を連想し、なんとなく金色に光り輝く大きなヘビが屹立している様子を思い描いていたのですが… そんな勝手な私の想像はものの美事に裏切られ、復元された竪穴式住居の中央部に大きく吊り下げられた異様な作品に、すっかり度肝を抜かれながらも…
 
「金色のヘビはなぜこんなに小さいの? なぜ蛍光黄色ではなく青い光の明滅なの? このたくさんの弓矢は…?」 …と様々な疑問が頭のなかをぐるぐると駆けめぐり。。

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怖いものみたさで、オブジェの真下、真ん中に立ってみると、無数の弓矢が私に向かって鏃を向けていて…まるでその背後の暗闇に、弥生の人が大勢、弓を構えて引き絞り、取り囲んでいるかのよう… でも一つ一つの弓矢は竹でできていてなんだか愛らしく…恐いというより、古代の人の、得体の知れないものへの恐怖と本能的・反射的な威嚇のしぐさを…まざまざと感じます。

そのまま上を見上げると…もう視界いっぱいに青い光が明滅を繰り返し、その隙間から金色のヘビの入ったシリンダーが何本もぶら下がって、それがまた青い光に照らされて…強烈な視覚の刺激に思考がメルトスルーしていくよう。。。

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そんな作品体験にたじたじとし、ふと足元をみると、そこには、とてもさらさらとした細かな土が広がっていて…なんだか、太古の昔から今まで営々とつながる地球の営みの温もりに支えられ抱かれていることが一瞬のうちに直感されて、心底ホッとしました。

そしてようやく人心地ついてみると、この、青白く光り輝く発光体と金色のヘビとたくさんの弓矢…ある意味では不気味にも見える今井さんの作品も、竪穴式住居の柔らかい温もりの暗闇のなかで、妖しく美しく輝くシャンデリアのようでもあり。

…太古の昔から、人は、光り輝くもの、光を発するもの、に畏怖の念をいだきながらも強く惹き付けられ、それと同時に、その力を支配下におきたいという強い欲望にもかられてきたんだなぁ… 

ふと風の音を感じて外に出ると、ご本人が立っていて、作品のあまりのインパクトに、咄嗟に「凄いね~!!!」としか声がでなかった私。「弓矢が…」というと「あれは制御棒のつもりなんだ。ヘビが暴れだしたら射ち殺すんだ。」との言葉に、またビックリ。
たしかに私自身も作品の真ん中に立ったときに、威嚇されているのをひしひしと実感しましたが…それを原子力発電所の制御棒として構想したとは、やっぱり凄い。。。

***

家に帰っても、何度も思い返してしまうほど、この作品は私の心に強く残り…ご本人に感想を伝えるとともに、このブログに取り上げることへの許可もいただき、どうしてももう一度晴れた日に、作品を見に行きたい…と思っていたところ、とうとう最終日となった気持ちよい秋晴れの日の午後、あらためて訪ねていくことができました。

今度はもう道に迷うこともなく、爽やかな秋の光と風のなか、遺跡公園の竹林や木立のなかにあたかもずっとそこに自生していたかのような他のアーティストの作品たちをみつけて、心楽しく散策しながら、ドキドキしつつ竪穴式住居に近づいて行くと、最終日のお客様を迎えに今井さんご本人がいらしていて、ご挨拶もでき、あらためて入口をくぐり降りて、再び作品の前に立ちました。

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今回は、今井さんの言葉で作品についてのテキストも設置されていて、作品の制作意図を理解しやすくなっていました。 …ウラン鉱石は恒星(たとえば太陽)の寿命が尽きて大爆発したときにだけできるとても特別な鉱物なのね…地球は宇宙のさまざまな星のかけらが集まってできていて、死んだ太陽のカケラであるウランも地球の一部としてちりばめられていて…フムフム。。私も、ウラン鉱の眠る山を先住民の人たちは古くから聖なる山として崇めてきたこと、そんなウラン鉱山でいまは彼等が被爆しながらウラン採掘の仕事に従事させられていることは知っていましたが… 今井さんは、 原子力発電について〔人間が触れてはいけない神聖な存在の“死んだ太陽のカケラ” ウランを「太陽のゾンビ化」して電気を作り失敗しました。〕と捉え、〔私は「太古か未来の人々が神聖な存在としての『金色のヘビの死体』を集めて電気を作る発電所を使っていた」という物語を作り、インスタレーションにしました。〕と述べておられます。宇宙の成り立ちから今につながる、すごくハッとするお話で、私が疑問に思っていた、どうして金色のヘビが大蛇ではなく小さいヘビなのか、この青い光の明滅は何をあらわしているのか、おのずと答えが見えてきました。

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前回は、私も作品全体から受けるインパクトにただただ圧倒されて…弓矢の鏃が何でできているのかまで意識がまわらなかったのだけど…平べったく削られてキラキラ輝く鏃は、黒曜石にちがいない!!と確認できたし、ひとつひとつ、石を削って鏃をつくり、それを竹の矢にくくりつけ、弓を張っている、あるいはおもちゃのヘビに一匹ずつ色を塗っている、今井さんの手技のぬくもりと、きっとまるで原始の人のような制作中の姿を想像することもできて、怖さや異様さよりもずっと、愛嬌というかチャーミングな心温まる魅力も感じられてきました。

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この間は、靴を履いたまま立っただけだったオブジェの真下=竪穴式住居の真ん中の地面をよくみると、全体のなかでそこだけ窪んでいて…きっと弥生の人は、そこで火を焚いて煮炊きをし、その周りに座って食べていたんだろうな…とも想像できて、私も地面に座って裸足になり、立って大地を踏みしめ、歩いてみました。竪穴式住居の内縁周りは、足裏に冷やリと踏み固められた粘土質の土のように感じられたのに対し、きっと竃だっただろう真ん中の窪みのあたりの土は、さらさらと乾いていてとても粒子が細かく…長いことそこで火を焚いて、その熱ですっかり土が乾燥しきっているんだろうな…
長い歳月、ミミズや土中の微生物たちの生命活動の繰り返しのおかげで、土がものすごく細やかにこなれているんだろうな… などと想いが巡り、ほんとうに、弥生時代から今まで2000年余もの時空が繋がって、今ここに在るんだ、と実感できました。

青く冷ややかな光に見えている今井さんの作品も、この竪穴式住居のなかに原子力発電所を喩えることで、原始の“火” を畏怖のうちに抽象して捉えているんだろうな…

この作品が、この弥生時代の遺跡…竪穴式住居のやわらかな暗闇のなかにあることに、この温かな細やかな土の上にあることに、大きな救いと癒しを感じるとともに、いま、多くの日本人の心に根深く横たわっている原子力発電所への大きな不安をともなう興味関心を、こんなにシンプルに、美事に、つかみあげて、子どもにも伝わるようなお話をつくり、造形としてもチャーミングな形に具現化してみせられる、今井さんの発想力と構成力の凄さに、あらためて深く感動し、圧倒されました。

現実に還ると、たくさんの森や土や水が放射性物質に汚染されつづけていることに心が痛み、それこそ未来の子どもたち・人類の姿を思い描き… 一刻も早く除染が進むよう
心より祈りつつ…

福島原発事故後の、弥生の遺跡・竪穴式住居のなか、という、「いま」「ここに在る」べくして在る今井紀彰さんのこの『ひみつのちから・パワーステーション』、会期終了で撤収されてしまうという事実はとっても名残惜しく感じられたけれど…ご本人によると、まだまだバージョンアップして作り続けたい作品だとのこと。作品のコンセプトというか、物語がすごく大切で、できれば作品と一緒に、その物語を絵本にして置いておきたい、とも話しておられました。…だとしたら、今回のこの作品が撤去されてしまっても、これからまたこの都筑アートプロジェクトで物語が「つづく」… それをまた、観て体感して味わう楽しみも「つづく」… そうなったら、本当にうれしいな♪♪

今井さんの他にも、参加されているアーティストの方たちがそれぞれに、この素晴らしい弥生〜江戸の遺跡のある環境と土地のパワーに触発されて、ユニークな作品を展開され、またそこから新しい出会いや感動がつながっていく『都筑アートプロジェクト』。
これからの展開が、ますます楽しみです。

今井紀彰さんのホームページ
http://imainoriaki.sakura.ne.jp/index.html

今回の会期中に行われた「アートツアー」の様子を動画でご覧いただけます
http://www.youtube.com/watch?v=dTb6uvucTdc&feature=share

都筑アートプロジェクト
http://tminkaen.org/?page_id=235

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