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先月半ば、『Lovegurumi』展示の終わった直後に、日ごろ参加しているデジタル写真の勉強会で、私自身の今年の活動報告を兼ねたスライドトークを行いました。人前で自分の写真作品について語るのは初めてのことで、何をお見せして、どんなことを話せばいいのか、あれこれ戸惑いながら準備をし…それまで趣味だった写真の世界により深く踏み入った転機の頃の作品を探していたとき、もう忘れかけていた旅の写真に出くわしました。

 

かれこれ13年前の今ごろ…会社を辞める決意を上司に伝え、次のステップへと写真の学校へ進むための書類等の手筈を整え…その頃ちょうど長めの休暇をとれた妹に誘われるまま、初めてのハワイへと旅立ったのでした。ホノルルの空港に着いたのは早朝、それからハワイ島へ向かう飛行機の乗り継ぎまでの空き時間に訪ねられるところとして向かったのが、地元の人が“ハナイアカマラマ(南十字星)”と呼ぶ「エマ王妃の夏の離宮」でした。詳しいいきさつは忘れてしまったけれど…たしか空港から、これまた初めてリムジン・タクシーに乗り込んで…辿り着いた“ハナイアカマラマ”は、ハワイ王朝の王妃の離宮にふさわしく、ハワイの自然とアロハの愛のスピリットにあふれた、とても可愛らしく心地よい空間でした。ちょうどクリスマス前のタイミングで、館内のあちらこちらに上品に豊かにクリスマスツリーやキャンドル等が飾られていて、異邦人の私たちも優しく暖かく迎え入れていただけているよう。旅はまだ始まったばかり、期待と不安の入りまじった緊張から、ホッと解き放たれて、とても嬉しく安らかな気持ちになったのを憶えています。

 

そこで美事なクリスマスの飾りを写真に収め…また空港へ…ハワイ島へ降り立って、最初の滞在はヒロの街はずれのB&B、庭には椰子の木が生い茂り、そのまま磯におりていけるロケーションの、心休まる宿でした。もちろんそこでも室内の様子や調度品や庭からの眺め等、あれこれ写真を写したのですが… 久しぶりの海外旅行の飛行機疲れか、どこかぼうっとしていたらしく、、、東京に帰ってきてからフィルムを現像に出してみたら、最初のフィルムは、何と多重露光になってしまっていました… どうやら二度、カメラに装填してしまった!?!

 

そんな訳で「エマ王妃の夏の離宮」の美事なクリスマスの飾りも、ヒロのB&Bでのまるでプライベートビーチのような憩いの眺めも、普通の写真としては見られなくなってしまって残念だったのですが…そのかわりに、写した私自身も想いもよらなかった何とも不思議な幻想的なイメージとなって姿を現してくれました。

 

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久しぶりに、突然この写真に対面し、その旅のあれこれを思い出したのはもちろんですが…それと同時に、重なりあったイメージの連想から、今年、2011年に内的に体験したとても大切なヴィジョンが2つ、ふっと浮かびあがってきました。

 

ひとつは、311の大震災の数日後、原発事故のショックのさなかに観た夢で。 …暗い夜に、大きな水辺のほとりに建っているウッドデッキのある建物の傍らに、何故か私一人佇んでいて。何かの役目に導かれるようにウッドデッキにあがると、そこには先客がいました。暗闇のなかにボウッと蛍光黄色に発光して輝いているとても美しい大きな蛇が、とぐろを巻いたまま鎌首をもたげ、哀しげな大きな濡れた黒い瞳で、じっと私をみつめた後、音も立てずにするすると目の前の大きな深い水の中に泳ぎ去って行きました… 

 

もうひとつは、今年の5月の半ばごろ、縁あって四国の箸蔵寺へ連れていっていただいたときのこと。 …弘法大師が金比羅大権現からご神託を授けられたと言い伝えられる山中の祠に導かれ、そこに入って瞑想をしたときに、閉じた瞼のむこう、祠の奥に広々とした空間が開けていくのがみえて、そこにはたくさんの灯明が、手前から奥の方まで点々と連なって炎を点してゆらめいていました…

 

これら2つの神聖な光を感じるヴィジョンは、東日本大震災を経て、何かが決定的に変わってしまったと感じる日々のなか、折り有るごとに、それぞれ個別に、私の心のなかで光を発してきていたのですが… 

 

なぜか震災直後から初めての個展を皮切りに作品発表の機会が次々と続いた今年の波も、ようやく一段落し、このようなタイミングでそんな機会に恵まれるというのは、それなりに意味のあってのことだろう、と… これから写真家として何を発信していくのかを強く意識し始めた、今このときに… 13年前に写真の世界に深く踏み込もうと覚悟を決めた、ハワイの旅でのダブルイメージの写真と、ちょうど再会したことで… この3つのイメージが、ふいっと結びつき、深いところでカチッとスイッチが入ったように感じられました。

 

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このブログも、おかげさまで、ぶじ10回目を掲載することができました。ここまでやって来られたのも、Sawawaのスタッフの方々や、読んでくださっている皆様に支えられてのこと…ほんとうに有り難うございます。

2011年は、東日本大震災はもとより、世界各地で、そして地球全体にも大きな影響を及ぼす、未曾有のできごとがたくさん続いた年でした。その不安と混乱のなかで、そしてこれから先も長くつづくであろう復興の道のりの途上で、私もまた深いところから揺り動かされ、今までにない経験を与えてくださった多くの人や森羅万象との出会いから、さまざまな学びの機会を与えられ、今こうして生かされて、表現の場を授けられていることに、深く深く感謝しております。

 

辰年の新年を迎えるにあたり、これから、写真とともにどんな大海に漕ぎ出ていくのか… どんなときにも、怖じ気づかずに、勇気をもって進んで行きたい… と、これから先の細やかな日々のできごとのひとつひとつも、楽しみにしています。

 

皆様も、今年はそれぞれに本当に大変な一年だったことと思います。来年は、愛に満ちた明るい年になりますように。

どうぞ佳いお年をお迎えください。

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