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今年の夏は、久しぶりに撮影仕事の波が来て、ずいぶん慌ただしく過ごしていたけれど…この秋は、すっかりその波も落ち着いて、教える仕事モードにどっぷり浸かっているこのごろです。

今回は、前回のブログ「愛の詩」に引き続き、先日の明治神宮での撮影実習のときの写真から。

 

この実習は、デザインの専門学校でグラフィックデザイナー等を志す学生達を対象に行っています。今まで、写真といえば、携帯かコンパクトデジカメか、フィルムカメラは「写るんです!」くらいしか使ったことのない彼等に、なぜ写真は写るのか、写真表現において光をコントロールすることがいかに大切か、という基本を体感から理解してもらうために、そしてフィルムや印画紙の写真の扱い方やデジタル写真とは違う味わいも知ってもらうために、機械式で手動操作の一眼レフカメラと、カラーリバーサルフィルムを用いて行っています。

フィルムを購入しに行くところから、撮影後にプロラボにフィルム現像を出しに行き、受け取ってきて、自分の手でフィルムをマウントするところまで…そして授業で結果を検証し、最後に作品としてセレクトしスライド上映するところまで…一連の課題の流れとしています。学生達にしてみれば、殆ど初めての体験。

そして私も、そんな学生達に伴走するべく、彼等と同じ日時に同じ場所で、同じフィルムで同じ本数を使って撮影し、作品も一緒に上映してみせます。もちろん、いざというとき彼等の露出計がわりにもするために、そして、それ以上の枚数を私自身が撮影したいときのために…デジタル一眼も持参します(「愛の詩」の写真は、そちらで撮りました)。

 

今年は初めて、売り場に並んでいたISO200の lomography のフィルムをみつけたデザイン科の学生達から「トイカメラ風の色調になるなら、このフィルムを使ってみたい」とリクエストがあり… 私も、彼等に合わせて、初めて lomography COLOR SLIDE/X-PRO 200 というフィルムを使ってみました。

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当日、私が使った自前の機械式の手動のカメラは…購入した当時は現役モデルだったけれど今となってはクラシックカメラと呼ばれてしまう部類のレンジファインダー、レンズはリーズナブルな中古品をみつけて購入した、35mm F3.5 で最短撮影距離が約1mのさらに古い時代のもの… ということで、小さなものの接写や動きの早いものの描写にはあまり向かず。 なにを写そうか考えながら… 自ずと、秋の晴れた日の公園ならではの、降りそそぐ陽射しの美しさやわらかさに心を惹かれて、レンズを向けていました。

 

学生たちは、50mm の標準レンズや標準ズームをつけた学校備品の手動の一眼レフで撮影していて、初めての体験に戸惑いながら、そしてピント合わせや露出の失敗、手ブレ等…多々ありながらも、それなりに、それぞれの個性の表れるフレッシュな感覚の写真を捉えてきます。

翌週は、「ここで失敗していても、初めてで当たり前のことですから、恥ずかしいと思わないでね。失敗して、悔しい想いをするところから、たくさん学んでください」と励ましつつ、一人一人の撮影結果を検証しアドヴァイスしていきながら、各自規定の枚数を選んで、作品として構成し、スライド上映して、全員で鑑賞しあいます。

 

そして授業の終わりに「今日の感想」を書いてもらうのですが…

例年に違わず、すべて手動の撮影の難しさやフィルムを扱う上で光に慎重にならなければならない点などには、もちろん言及が多くありましたが… 今回は、自分たちで気になったフィルムを購入したこともあって、そのあと一連の、撮影〜現像の発注〜マウントも自分の手ですることで、いままですべてカメラ任せ・人任せ・パソコン任せにしていて、あまりにも簡単なことだと思っていた写真が、とても手のかかる面倒なものなんだ、と…でもその分、それを自分の手でやってみることで写真に対する愛着がわいてきた、愛おしいと思うようになった、という感想を残してくれた学生が、何人もいて。

やってよかったな!…と今まで以上に思いました。

また、他の人の作品も一緒に鑑賞することで、同じ日の同じ時間に、同じような場所でカメラを構えていても、写る世界や撮り方が全然ちがう、という、カメラという機械を介すからこそ際立つ個の視点の発露も、彼等にとっては大きな気づきと発見のようでした。

 

一人の学生が、感想の最後に「先生の写真の光が黄いろくてソフトでとてもキレイな色でした。」と結んでくれていました。 黄色っぽい発色は、この lomography のフィルムのノーマル現像の特徴らしく…たまたま今回テストで使ったこのフィルムの持ち味と写真の内容とが合致した賜物なのですが。 はっきりした面白いモチーフを写した訳ではなく、秋の光のやわらかい美しさに心惹かれて写したこれらの写真を、ちゃんと感じとってくれる人が、今どきの学生のなかにも一人でもいるんだ… と、私も、なんだかとても励まされました。

 

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思い返せば、私が会社を辞めて写真の世界に深く入り始めたころに、ある方がユージェーヌ・アッジェの写真展を観に連れていってくださり… そこで初めて出逢ったアッジェの、並々ならぬ写すことへの情熱のこもった抑えた色気に満ちた写真と、まるで黄金色の光を発しているかのようなオリジナルの鶏卵紙プリントの美しさにすっかり魅入られてしまったあの日から… 私のなかの写真に対する感覚の、底を貫き流れる大切なものが刻印されたような氣がします。

 

これらの lomography のフィルムで写した写真をみていたら、あのとき以来の、写真から発せられる黄金色の光への憧れが、甦ってきました。…lomography のフィルムのおかげとも言えるかもしれないけれど…そんな黄金色の光を発する写真に、すこしでも近づけているなら、とても嬉しく有り難いこと。

このところ、いろんな局面で、太陽の光は、宇宙の大いなる愛のはからいの表れを一番に感じとりやすいものではないかと感じます。これからも、ますます、そんな黄金色の光を皆様にお届けできるよう… なお一層、精進しなくっちゃ。。。 と思いをあらたにしています。

 

 

 

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