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四谷四丁目の交差点の角にあるビルの5階、都心の小さな隠れ家のような CROSSROAD GALLERY にて、先週6日ほど、久しぶりに銀塩モノクロームの作品を展示しました。

ギャラリー企画のワークショップ「手焼き職人とのコラボレーション 最高のプリントで展示をしよう 第2期」修了展で(詳しくは前回の「写真のぬくもり」をご覧ください) 8名の参加者が各々3~5点、銀塩のプリントをフォトグラファーズ・ラボラトリーのプリントマン斎藤寿雄さんに焼いていただき、全員同じ印画紙サイズ・フレームサイズで、額装から展示まではギャラリーの方にお願いする、という試みでした。

通常だと、展覧会の前にかなりの精力を注ぐプリント制作や展示プラン&準備搬入設営の部分を、今回はワークショップの枠組みのなかで、ご相談しながらお任せできたため、引っ越し前の断捨離や荷造りに追われている私でも、何とかぶじに展示し終えることができました。

初日の夜、わくわくしながら CROSSROAD GALLERY に出かけ、初めて仕上がった作品と対面し、斎藤さんが焼いてくださったプリントの丁寧な美しさに感動… そしてまた、ギャラリーの杉守さんが手がけてくださった、変形スペースの会場の中での8人の作品の割り振りや全体の流れ、私の分の3点+1点の写真の展示構成も、私自身の想像を超えていて、心地よい驚きと喜びを味わって…

初日のギャラリーを閉める杉守さんをお手伝いし、一緒にビルの5階から地上に降り立ったら… 四谷四丁目の交差点で、あたかも光の花が咲いているようでした!

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撮影したのは、9月末の秋晴れに恵まれた土曜日の午前中。初顔合わせの参加者8名で赤坂の日枝神社に出かけ、およそ2時間ほど、日枝神社を中心に自由に歩きまわって写したものの中から、それぞれ3点を選び出しました。


同じ日の同じ時間に同じような場所で…それぞれ何にカメラを向け、どのように写すのか。そして、その中から何を選び出すのか。 日ごろ同じような課題を教え子に向かって投げかけているため、私自身も、もう一度、課題を出されて取り組む側に立ち還ってみる、よい機会でもあり。 また、撮影の日に一度会ったきりの他の参加者の方たちが、どんな作品を展示されるのか、とても楽しみでもあり。 

いよいよ同じ空間に展示されてみると、一人ひとり全く違う視界が開けていて、プリントのクオリティが高いからこそ際立つ、写真表現の「個」の表出の力に、今更ながら感心しました。

 

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今回のことで初めて訪ねた赤坂の日枝神社は、大山咋神(おほやまくひのかみ)を御祭神にまつっているそうで、江戸時代には江戸城の鎮守として徳川家の崇敬は特に篤かったとか。本殿に向きあう神門には、なんと男女の番のお猿さんが奉られていました!しかも女の方は胸に子猿を抱えたお母さん猿。きりりと居ずまいを正してまっすぐ前を見据えているお父さん猿と、慈愛にみちた表情ながら世の中のことを見逃さない意志の強さを感じられるお母さん猿、そして彼女の胸に抱かれている子猿もつぶらな瞳でまっすぐ前を見ています。 もちろん、広く万民の幸せと繁栄を祈願し、江戸東京を見守ってくださっているのでしょうけれど、、 ちょうど彼等の視線の先には、永田町、国会議事堂があるような立地です。この写真を対で展示しようと決めた後から、じわじわと…昨今の国会議事堂を取り巻く原発反対のデモのことが思い起こされるようになってきて… またここのところの政治狂躁と選挙… まさに、このお猿さんたちも日本の行く末に心を痛めておられるのではないか、と思われてきます。
この番のお猿の神様の写真を対にして、中心にもう1点…母猿が掲げている神鈴から、まるで一つの鈴が転がって行ったような…その鈴の先に見えた藤棚の下の一組の男女…そんな写真を選んでみました。

そして、その3点とは全く別に、この春からしばらく白黒フィルムで撮り続けていた日々の写真の中から、自分でプリントするのがなかなか難しく、どうしても斎藤さんに焼いてみていただきたかった1点…私が毎日のように通っている最寄り駅からの商店街の夜道の景を加えて、お願いしました。

 

斎藤さんに仕上げていただいたプリントは4点とも、とても丁寧な美しいモノクローム…やや光量不足だった私のネガの欠点を美事に補って、穏やかなやわらかい空気の層の重なりを表現してくださっているかのよう! 

また、展示構成の部分でも、夜の街路の写真は日枝神社の3点とは切り離して展示されるのではないか、という私の想像はすっかり外れ、杉守さんは、左右の番のお猿さんに抱かれるかのようにcross型に構成してくださっていました。 聖と俗と、両方あってのこの世、という解釈をしていただいたようです。

 

これら4点とも、テストプリント時の、拙いながら私の作品の意図の説明とプリントの方向性のお願いを、よく汲み取って、味わい深いプリントに仕上げてくださった フォトグラファーズ・ラボラトリーの斎藤寿雄さんと社長の平林達也さん、そして、もしかしたら私以上に4点の作品の声を聴きとって展示構成してくださった Roonee 247 photography / CROSSROAD GALLERY の杉守加奈子さんに、心より感謝を捧げます。

 

短い会期の展示にもかかわらず観に来てくださった皆様、感想をお寄せくださった皆様、とても励みになりました。 ほんとうにありがとうございました!

 
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この展覧会の会期中…ここのところ、殆ど家に籠って断捨離や引っ越しの準備ばかりしている私にしては、嬉しい意味で刺激的なことが続き、ある晩、親しい人と楽しく飲んで、ギリギリの終電で帰ってきました。最寄り駅の一足手前で終点になってしまうこの電車を降り、街灯で明るく照らされたバス通りをバス停3つ分くらい、てくてく歩いて帰る途中、いつも必ずチェックする古道具屋さんの前で足を停めてみました。

滑車から張られた糸や貝殻のネックレス等が生みだす三角形に近い形状と、背後の赤と緑の布のせいか… ガラスに映った街灯のハイライトが天辺の星のようにも見えるせいか… なんだか、不思議なクリスマスツリーのようにも見えてきます。

そして、この摩訶不思議なオブジェの中心から、怯まずまっすぐ見つめる瞳。

このような曇りのないまなざしを、保ち続けたいものです。

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このワークショップに参加を決めたときには、まだ、この年末に引っ越しをするなんて微塵も気配はなかったのに… あれよあれよという間の思わぬ成り行きで、なんとこのブログの次の更新日が引っ越し当日! という展開になってきました。
引っ越しに備えて、この家に来て12年(そしてそれ以前からも)溜め込んでしまったものの断捨離に取り組んで… 今の私自身と、忘れかけていた、あるいは未だに手放せないでいた過去の様々な断片と、向きあう事を余儀なくされ、記憶のなか、心のなかで、様々な想いが去来する交差点のような状態で、ここしばらくを過ごしています。

そんなときに、たまたま、交差点の角の雑居ビルにある一室で作品を展示することになり、しかもその空間の名前は “CROSSROAD GALLERY”。 そこで展示していた作品も、聖と俗が交差しつつ抱き合うような構成となって… 何だか、とても象徴的な体験でした。

あらためて、とてもたくさんの方々との関わりに支えられて、あるいは目には見えない歴史にも支えられて…地球の自然、すべての生き物との関わりのなかで生かされて、生きていられるのだと、深い感謝の想いとともに、いま、居ります。

CROSSROAD GALLERY… 語感もよいし、ロゴタイプもなかなか素敵。四谷四丁目の交差点のビルの入口に出されている看板も、その一角の雰囲気といい感じによく合って好きなんだけれど…会期中やはり他のことで精一杯で看板の写真を撮りそびれてしまった。。。 と思いきや、最終日に、仕事の合間にお散歩がてら観に来てくださった写真家の染瀬直人さんが Instagram で素敵な写真を撮ってくださっていました♪♪ とても嬉しかったので、お願いして、記念に、ここにシェアさせていただけることになりました。染瀬さん、どうもありがとうございました!

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もう私たちの展示は終わってしまっていますが… CROSSROAD GALLERY では、今週末と来週末、クリスマスやお正月に向けた、素敵なフォトグリーティングの展覧会とワークショップを開催されるそうです。
よろしかったら、足をお運びになってみてはいかがでしょう?

こばやしかをる「フォトグリーティング展ー写真の贈り物ー」

 

また、美しい銀塩のプリントを…と思う方がいらしたら、ぜひ、赤坂のリキマンションにあるフォトグラファーズ・ラボラトリーさんを訪ねてみられては?

フォトグラファーズ・ラボラトリー