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かれこれ4年ほど前、ヨーガン・レールさんの取材撮影の仕事で、何度か清澄白河のオフィスを訪ねたことがあるのですが、そのうちのあるとき、オフィスビルの1階の ババグーリ というヨーガンさんのお店で、箒の展覧会(*)をやっていたことがありました。広々とした店内の一角に、天然素材の様々な色や形や大きさの箒が、あちらこちらに吊り下げられ… それまで私が観た事もなかったような、まるでオブジェのような美しい形と色のタイ製の箒などは何万円もして、その美しさとお値段との凄い存在感に、ビックリしたことがあります。 

その展覧会をきっかけに、植物を束ねてつくる「箒」という道具の素晴らしさに感激し…さすがに高い美しい箒は買えなかったけれど、手頃なお値段でお洒落な形の日本製の棕櫚の卓上箒と はりみ という和紙に柿渋を塗って作られた塵取りを買って帰りました。その箒についていたショップカードで、東京の日本橋に江戸箒の専門店があることを知り「そんなお店があるんだ!…日本橋の、どこなんだろう? いつか覗いてみたいな。」と思っていたまま時が経ち…

今年の新年早々にアーティストの知人の展覧会を観に行った、京橋の現代美術の Gallery K で、ひょんなことから、この春、個展をすることになり、ギャラリーに初めて打ち合わせにいったとき、ふと隣のビルの一階の店舗の看板を見たら…「江戸箒老舗 白木屋傳兵衛」… これは、もしや!?かつて氣になっていた箒屋さんでは? と、偶然のめぐり遇わせに、とても嬉しくなりました♪ そして、何度目かのギャラリーでの打ち合わせの終わった後、たまたま店内に先客らしきスーツ姿の人影が見えたので、いよいよ店に入ってみました。
 

中に入ると、靴をぬいで一段高くなった板の間に上がるようになっています。その板の間の奥に、畳を敷いた小間があり、そこで職人さんが箒を編んだり直したり、壁にも箒がずらっと吊るされて、まさに箒だらけの一角。

先客の男性に向けてお店の方が箒の説明を詳しくされていて…私も、それをじっと拝聴しながら、店内のたくさんの種類の箒やハタキやタワシなどを、興味深く眺めました。その方がお帰りになって、ようやく私もお話しできる順番が巡ってきて、ヨーガン・レールでの箒展のことをお話したら、やはりそのとき出品されていたとか。私の買った棕櫚の卓上箒の持ち手の紐が解けてきてしまったとご相談すると、持参すれば修理できる、との嬉しいお返事。

日常の掃除にも箒を使ってみたいと言うと、部屋の床材が、畳なのか、フローリングか、絨毯か…部屋の間取りや広さによっても、使う人の身長や腕の長さや腕力によっても、ホウキグサの材料や量、持ち手の長さ、などで向き不向きがある、とのことで、できれば店頭で実際に試してみて、その人に合った箒を購入してもらうとよい、とのお話でした。今まで、そこまで箒に関心を向けたことがなかったので…箒一つにも、それだけの細やかな配慮のもとに作られているのか… と、あらためて感心。。 その日は、たまたま個展のDMが刷り上がってきていたので、ご挨拶もして、個展のハガキをお店の方にお渡しして、会期中にまた覗きにきます! と、お店を後にしました。

それからしばらくして、いよいよ隣のビルの Gallery K での個展会期中のある日…見知らぬ青年が見にきてくれて、結構じっくりと写真を眺めて、楽しんでくださっているようでした。一通り眺め終わられたころを見計らって、お声をかけてみたら、なんと、その箒屋さんにお務めで、写真がお好きだとのこと。ちょうどギャラリーにも相客がいない時間帯だったこともあり、しばし写真談義に花を咲かせて、お帰りになられました。

ヨーガン・レールでの箒展からの不思議なご縁が、ここで写真のことにまで繋がって、本当にうれしく、別れ際に「会期中に寄りますね!」と言ったものの、個展は一週間の短い会期だったためか、その後、お客様が相次いで来られて、とうとう会期中には再訪できず… またギャラリーに立ち寄る折にでも、と思いつつ、なかなか果たせないでいましたが。

 

そのときには、まだ微塵の気配もなかった引っ越しの話が、いよいよ現実に迫ってきて、ようやく新居での掃除道具を買い求めに、白木屋傳兵衛を訪ねることができました! 

もちろん、棕櫚の卓上箒も持参して、修理にお預けもしてきました。さっそく持ち手の紐の部分を直しにかかってくださっています(写真上)。新しい家は、フローリングがメインで、部分的にラグを敷いたりしようと考えているため、床も絨毯もしっかり掃けて、細かい部分にも穂先が届きやすい、軽くてしなやかな腰のある手箒を、あらたに一つ買い求めました。 今回は、箒の手直しもしてくださっている女性の方が応対してくださいましたが、個展に来てくれた青年の話をしたら、なんと店長さんだとか!このときは外に出られていてお会いできなかったけれど、年が明けて、修理を受け取りに行くときにはお目にかかれるといいな…と、また次の楽しみにもつながって、なんだか嬉しいご縁です。

 

いにしえの時代から「箒神(ははきがみ)」という神様が宿る、とも言われてきた箒。熟練の職人さんが、草を選ぶところから編み上げまで手がけてくださった箒は、小ぶりでも、とても軽やかでバランスがよく、手にすると心が明るくなるような氣がします。この箒で、不浄なものを掃き清め、部屋の掃除と一緒に心も澄んでくるような、この引っ越しを機にそんな日々を過ごしたいと思います。

 

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私の年内の投稿は、これで最後になります。今年も拙い内容におつきあいくださって、ありがとうございました。

新年は、新しい部屋から…なにを皆様にお届けできるでしょうか…

 

辰年の年女で… 早生まれなので卯年の学友たちのなかで大人しく育ってきたためか、いままであまり意識したことがありませんでしたが、今年は、自分自身の表層的な思惑をはるかに超えるようなできごとや行動を起こす大きなうねりが、公私ともに次々にやってきて、我ながら、自分のなかにも確かに“龍”がいるんだ、と驚きながら自認した年でもありました。身近なところで、その“龍”の まだコントロールの効かない奔流のような勢いのとばっちりを受けとめてくださった方には、ご迷惑をおかけしたことを心よりお詫びするとともに、感謝の気持ちでいっぱいです。 ほんとうに有り難うございました。

来年は巳年。系統の近い仲間でも、もう少し しなやか で したたか なのかもしれません。私自身も、今年見出した“龍”の魂を、日々よりよく磨きつつ、しなやかにコントロールして、したたかに表現していける術を、もっと身につけたいと思います。

皆様も、どうぞ、健やかに、よいお年をお迎えください。

 

江戸箒老舗 白木屋傳兵衛

*ババグーリのほうき展