今日は、2年前から教えている都立総合芸術高校の卒業式。週1日だけ授業を受け持つ市民講師の私は、式典に参加するわけではないのだけれど、卒業式の始まる前の朝早い時間に学校へ行ってきました。

何故かといえば… 写真専攻の高校3年生たちの卒業前の最終課題としているフォトブックの制作に、講師も同じ条件で取り組んで、仕上がったブックを卒業式の朝にそれぞれ持ち寄り、交換するために。写真専攻の卒業生は今年3人(写真の中央3冊)、曜日違いで担当する講師2人(右端と左端の2冊)、計5人が久しぶりに顔を揃え、それぞれの成果物を見せあいながら交換し、お互いの健康と今後の健闘を祈念して、卒業生たちは式典へ、講師2人はそれぞれの今日の仕事へ…と、爽やかに別れてきました。

この最終課題の内容と要件はなかなか複雑で… 最終的には、同じオンデマンド印刷のフォトブック(文庫版 48ページ)1冊を各自で作成し、人数分を発注して交換、参加者全員のフォトブックが1セットずつ卒業記念にそれぞれの手元に残る、というもの。

1見開きにつき、写真(画像)1点と文章1〜7センテンスを必ず入れる/見開きの no.1〜no.23 まで、各自ランダムにキーワードを書き出し全員で共有し、各見開きno.毎に全員のキーワードを全て使って文章をつくる。文章の1センテンス毎に必ずキーワードを1つ以上入れる/表紙とタイトルは自由。 

参加者は、写真専攻の高3生と講師の5名の他に、美術科の教員・講師2名が希望されたので、合計7名。各見開きページ毎に7個のキーワードを全て使って文章をつくり、写真と合わせる…という、かなり難易度の高い課題でした。

全員フィニッシュできるのか…途中経過はそれぞれ悪戦苦闘あったようですが、少なくとも写真専攻に関わる5人は、今日、晴れてフォトブックを交換でき、皆と別れた後、さっそく中身を見てみたくてモーニング・コーヒーブレイクへ。

卒業生3人は、それぞれの個性が写真にも文章にもよく表れた内容にまとまっていて、初々しく。卒業制作の終わった後の11月半ばから課題を共有し、最初の頃は、文章に詰まっている生徒たちに私の下書き原稿を部分的に見せていたりもしたので、どこかで見たようなアイディアだなぁ…と苦笑するページもあり。同じ講師のもうお一方の作品は、さすが課題の要件を最終的に取り纏められただけあって、写真は撮りおろし、文章はキーワード全てを “てにをは” でつなげて詩のように簡潔にまとめられて、すっきりとした仕上がりでした。

高3生の授業は、それぞれの卒業制作のプランに沿って進められ、講師の役割は、生徒から何か質問や問いかけがあればそれに応える、講評会でない通常の授業時間はおおむね静かに見守る…というものだったので、特に2年目から入って来た授業担当週1日の私には、それぞれの生徒とゆっくり会話を交わす機会もあまり多くなく、この最終課題作品の交換が、お互いを知るうえでも、とても大切な記念となりました。

ご卒業おめでとうございます

どうぞ元気で、のびのびと羽ばたいて…

そしてまたいつか、クリエイター同士として再会できることを期待しています!!!

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私はといえば…課題の詳細が決まった当初は、まだ時間もあることだし、文章をじっくり練って、年が明けて暇になる頃それに合わせて撮りおろしを試みようかと考えていたのですが。年明けとともに、実家の引っ越しという急展開の事態で1〜2月が殆どつぶれてしまい。。直接、高3生を受け持つ写真の講師だからギブアップする訳にもいかない…と、苦肉の策で、2009年から今日まで撮り溜めている日々のスナップのなかから、キーワードに嵌りそうな写真を探し出すことにしました。

ところが、いざ始めてみると… 今年卒業の高3生は、3年前の東日本大震災の頃に中学校を卒業して4月に高校に入学してきているんだ、と、しかも、彼ら彼女らが入学して来たちょうどその頃、私自身は初めての写真の個展を開催していたんだ、と気がついて。

写真家として初めての個展から3年、東日本大震災と原発事故の衝撃から3年、そして高校に入学した生徒が卒業して行くまでの3年。 ものすごく気がかりで…初めて被災地を訪ねられたのが震災から1年経った4月…ちょうどその4月から、この高校で2年生と3年生を教えることになった(そのとき受け持った初めての2年生がこの春の卒業生)、その年の5月には2度目の個展を開いた… そして今もなお福島第一原発から汚染水が垂れ流されていることへの気がかりから発展して最近撮りはじめている水族館のシリーズまで… 私の中で、それぞれに複雑に重なりあい絡み合うこの3年を振り返り、忘れてはいけないこととして思い切り表現する機会を得られた、貴重な取り組みとなり。 

おまけに、期限ギリギリまで入稿にかかっていたので、完成品が手元に届いたのは、なんと3月11日。とても個人的な内容ではあるけれど、まさに「あれから3年…」の備忘録となりました。

今回は、課題の要件として しまうまプリントというところでフォトブックを作成しましたが、この内容をもう少し掘り下げて再編集し、印刷し直して、今年はなんとかアートブックフェアに出品参加したいと思っています!

皆様に、あらためてお目にかけられる折がきたら、またご案内いたします。

乞う ご期待 ☆☆

By Waka