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ここのところ、ニホンオオカミに惹き寄せられて、あれこれ文献などを調べています。悲しいかな、ニホンオオカミは1905(明治38)年に東吉野の鷲家口で捕獲された一頭を最後に、学術的に正式に認められた生存情報はなく、絶滅したといわれています。それでも、時折、各地の山間部での目撃情報がニュースにもなり、今でもニホンオオカミは生きていると信じて活動している方たちもいらっしゃいます。

ニホンオオカミの学名は Canis hodophilax あるいは Canis lupus hodophilax、種を表す hodophilax には “道を守る者” という意味があるそうです。私自身、名前の「道」の字と通じるところにも親しみを覚え、心の何処かで日本の山奥深くひっそりと生き延びていて欲しいと願い、ニホンオオカミの存在を何とか写真で表したい、と思っています。

ただ、日頃からアウトドアでの活動や山登りに励んでいるわけでもない私が、東北や吉野や九州の山々にカメラを担いで探索に行くのはそう簡単なことでもなく。それでも、多少なりともニホンオオカミが生息していたといわれる環境に近づきたくて、まずは先日、オオカミ信仰で有名な奥秩父の三峯神社を訪ねてみました。

秩父多摩甲斐国立公園の奥深い山中、入り口の三つ柱鳥居をくぐると、明らかに空気が清涼に変わるのが感じられる標高1100mの聖地。境内には、各地の講社から寄進された御眷属の「お犬さま」(オオカミ)の像が何対もあり、それぞれに個性豊かな阿吽の表情に彫られていました。

昔の仁王門だった随身門には、たしかに仁王とも言えるような迫力の「お犬さま」。拝殿に向かう青銅鳥居の前には比較的新しい寄進と思われる劇画タッチの表情の「お犬さま」。本殿拝殿の前の御神木の重忠杉の脇に鎮座していた「お犬さま」は、苔むした風情にもひときわ年季を感じられるものでしたが、近づいてみると毛並みまで彫り込まれるほど丁寧なつくり、とても優美な印象を受けました。台座に 江戸 四谷 と刻まれているところを見ると、江戸時代からここに奉られて、人々の暮らしを見守ってくれていたのかな。同じ三峯神社の境内に奉られているとはいえ、寄進者や制作年代、そして彫り師が違うとガラリと趣を変える「お犬さま」の表情や佇まいを見ていると、大口真神(おおくちのまかみ)と呼ばれて崇められていたオオカミへの人それぞれの敬愛の情が生き生きと伝わってきて、私もますますニホンオオカミへの想いが募ります。

 

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三峯神社から戻り、余韻さめやらぬ日々… 他にも、ニホンオオカミの面影を追える古い絵や彫像があれば訪ねてみたいとあれこれ調べているうちに、こんなニュースを発見!

<オオカミ絵>復元に前進 東京芸大引き受け|河北新報オンラインニュース

何と!私の探しているものと母校が結びついている!! しかも、かつてこのブログの「狼と」で紹介したNHKのETV特集「見狼記〜神獣 ニホンオオカミ〜」の中に出てきていた山津見神社で!!!

あまりにもタイムリーな邂逅に、驚きました。私は、大学時代には日本美術史のなかでも江戸時代の絵画を専攻していたので、寺院や神社に描かれた天井絵やふすま絵、杉戸絵にも馴染みが深いのです。とても強く惹き付けられ、さっそく、復元を手がける東京藝大大学院の保存修復日本画研究室の荒井経准教授にアポを取り、お話を伺ってくることができました。

この山津見神社のオオカミ天井絵を復元するプロジェクトの素晴らしいところは、失われてしまったものを熟練の職人さんや芸術家の手でそっくりに復元するのではなく、保存修復を学ぶ若い学生さんたちの手で、一人一人の瑞々しい感性を通して描き直されるところにあると感じています。先ほどの「お犬さま」の像を見比べても感じられるように、何人もの感性豊かな若い人たちが手がければ、たとえ元絵のお手本があるにしても、結果的に、個性あふれる生き生きとしたオオカミ像が様々に描き出されることでしょう!そして、そのように生み出された新たなオオカミの天井絵は、避難生活を余儀なくされている飯館村や山津見神社の地元の方達をどれほど励ましてくれることでしょう!!

前述の荒井経先生とのお話のなかで、これからの復元のプロセスを研究室の日誌のように綴るブログを立ち上げる…と伺って、とても楽しみにしていましたが、いよいよ、その「山津見神社オオカミ天井絵復元プロジェクト」のブログが公開されています。もし、この福島の飯館村にある山津見神社の再建と、オオカミの天井絵復元のプロジェクトに興味を抱いてくださる方がいらしたら、ぜひ、こちらをご覧になってみてください!

山津見神社オオカミ天井絵復元プロジェクト

 

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この「山津見神社オオカミ天井絵復元プロジェクト」との出会いをきっかけに、ほぼ一年ぶりに、このブログ「林道子の みちみち日和」を更新いたしました。これから先、このプロジェクトの話題をメインに、折々に発信していければ、と考えています。こちらへも、またお立ち寄りいただければ幸いです!!