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前回いったん延期した話につき、やはり家族のプライベートなことなので、と迷ったのだけど、今年も終わりに差し掛かり、なんだかさっぱり区切りになるような気もするので、そのまま書いてみようとおもう。
 
じつは島根への旅の大きな原動力は父の病気だった。
二ヶ月ほど前に急に発見されたその病は、偶然見つかったのだから初期であろうという家族の期待を裏切り、緊急で手術をすることが決まり、つとめて明るく振る舞う母をよそに私の心は不安と楽天的であろうとする自分とが闘っていた。
 
子供の頃からどこか心配症だった。
なにか起こってほしくないことは、いちど起こった事態を想定して噛み締めてからでないとその不安を払拭することができないタチで、いつも最悪な状況を想像して事が起こる前から胸を痛めていた気がする。
なぜか、そうすれば、最悪なことは避けてこられた気がするのだ。
たとえ多少よくないことがあったとしても、想像したうちの最悪なことよりは ”良かった” とおもえる。
そんな思考の防御態勢が身に付いてしまって、変な言い方だけど最終的には楽天的なのかもしれない。
 
たまたま周りで不幸がつづいていたこともあり、この時期、’人の死’について’失う’とはどういうことなのか、自分ではどうすることもできない抗えない出来事を’受け入れる’ということについて、ひととおり思いをめぐらせずにはいられなかった。
 
島根に向かう気持ちを後押ししたのは、ちょうど手術前のタイミングで父のことを神頼みしようと思ったのもあって、病気や怪我に効くという日御碕神社の御神砂を偶然みつけていただくことができた時は、まったく予備知識もなかったので、導かれたようでとても嬉しかった。
そのお護りの効果か、父の手術は無事成功し順調な回復ぶりで、まだ今後も経過をみていく状況ではあるとはいえ少し安心できた今、あのひと月くらいの間に家族に起こった出来事がなんだったのか、不思議におもわずにはいられない。
 
自分自身、展示の準備のやり取りに加えていろいろと仕事が重なり余裕がなくなっていたときに父の病を知ったので、今までになく心のゆとりを失っていたようにおもう。そして離れて暮らす実家でも、たまたま仕事をいくつか抱えて忙しい時期だったようで、母は大変そうだった。
まずはそんな時にかぎって、というかたちでモノが壊れはじめ、実家のパソコンの調子がわるくなり、私の携帯は突然フリーズしたまま動かなくなり、さらに実家では納期の数日前に版下を出そうとしたらプリンターが壊れたという。
たぶん電子機器というのはじつは人の波動にとても敏感なのではないか、とさいきん真面目におもう。
 
そして、島根で手に入れた御守りを渡しにその足で実家に寄ると、次の日に父が交通事故をおこした。
もしかしたら手術をまえに父自身も動揺していたのかもしれない。
でも不思議なのは、この時の父は私が買ってきた御守り(御神砂ではないもの)を殊勝にも身につけたばかりで出かけたのである。
神様というものには感謝するものだと信じている私は、たしかに車は全損ほどの事故なのに本人は傷ひとつないので、守ってくれたのだろう、とありがたく思うのだけど、でもやっぱり、そもそも事故をしないほうがいいのでは、と腑に落ちない気もする。数十年運転をしつづけていて大きな事故をしたことがない人なのに、どうしてこのタイミングなのだろうとおもう。
 
「きっと守ってくれたんだよ。」とも「モノが壊れるのは身代わりになってくれたんだよ。」とも言われるし、はたまた「そんなものは全くの偶然だ。」という人もいる。
 
ただ、じつは以前にも私が都内でパワースポットだと言われている神社にお参りに行った直後に、これまた数十年運転していて無事故だった母が事故を起したことがあったので、なにか意味がある気がしてならない。
だれか分かる人がいたらおしえてほしいくらいだ。
そのときも、大きな事故のわりに奇跡的なように本人は無事だったので、きっと守られているのだとはおもうのだけど、なにか私のお参りの仕方がいけないのだろうか。。
その話を家族にすると「それなら今度は宝くじを買えば ’当たる’ のかしら。」とわらっていたので、家族はずいぶんと楽天的なのでとても救われる。
そしてどこまでも良い方に考えるので、不幸中の幸いをみつけては「そばにあった看板に当たらなくてよかった」「落ちたのが田んぼでよかった」と言って、なにより本人が無事でよかったというところに落ち着くようだ。私も素直に感謝することにした。
 
ここまでくると、もうなんだか可笑しくなってきて、きっと幾つかのツイてない出来事たちは、すべて父の手術がうまくいくための犠牲のようなものだと受け止めることにした。
そのくらいで済んでくれれば、全然いい。
そうやって明るく笑い飛ばした電話口で、母が「今度は洗濯機の調子がおかしい。」と言っていたのだった…。
 
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