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父がいなくなってから、母と旅行に行こう、と話していた。

年の暮れにかけてすこし心労が溜まっていそうな母を連れて、どこかに行きたいな、と思っていたところに、思わぬ幸運で北欧にオーロラを観に行く機会をもらい、急遽旅立つことになった。

私は前日夜おそくまで仕事をしていて、母も当日の朝に空路やってきたので、お互いなんだか慌ただしく旅気分も盛り上がらないうちに出発したとおもったら、臨時の直行便は9時間半でスウェーデンの最北端の街、北極圏のKirna(キールナ)に到着し、そこは真っ白な雪に覆われておもちゃのように可愛らしいところだった。

 

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あっという間に別世界に放り込まれてしまったアリスのような不思議な感覚をおぼえながら、飛行機を降り立ち、少しずつはるばる北欧までやってきたのだと噛みしめてみようとするのだけど、不思議と実感が湧かない。

出発前に怖じけずいていた寒さもそれほどではなくて、空気は冷たくても、やはり乾燥しているからか体の芯は暖かい。

 

持ってきたプラトンの「饗宴」を機内で読もうと思っていたのだけど、眠さと映画のせいでほとんど進まなかった。

ー ソクラテスは友人アガトンの晩餐へ向かう道すがら、ひとり物思いに耽ってしまい、一緒に向かったアリストデーモスに取り残されてしまう ー

なぜかそんなくだりが滑稽で気になり、私の思考も立ち止まってしまった。

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饗宴といえば、オーロラはよく’光の饗宴’とも称される。

太陽の動きや太陽風の影響を受けるらしくて今年は11年に1度の当たり年なのだそうだけど、何にしてもオーロラは晴れていないと見れないという。星空がみえるほどの晴れ渡った日に、さらに運がよければオーロラが出現するのをみることができるという、希少な気象現象。

なんとなく分かっていたつもりでも、私も母も、あまり下調べもなく、来れば見れるだろうくらいの軽い気持ちで来てしまっていた。

それでも母は、「以前にカナダに行った時にオーロラが見える話をきいてから、いちど見てみたかったのだ。」といままで聞いたことのない話をしだして、念願だったのらしい。

純粋に来れたことを喜んでくれているのは嬉しいのだけど、ここまで来てみれなかったらと考えると少しだけプレッシャーだ。

 

Kirnaに着いた日は、機内の天気予報では’曇り時々雪’と言っていたけど、降り立った時は夕陽に包まれて青空がみえていた。

果たして、オーロラは見えるのだろうか。。。

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次回からもしばらく旅のお話にお付き合いください。