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健(たける)は高校の修学旅行で行った大阪の国立文楽劇場で、初めての文楽を体験することになった。劇場で熟睡していた健は突然、だれかに石をぶつけられたように感じて、目をさます。石のように感じられたものとは、義太夫を語っている老人が発するエネルギーだと悟った彼は、舞台上の老人とガンの飛ばし合いをした結果、負けを悟る。この瞬間に、健は文楽に惚れ込み、大きなエネルギーにひかれるように、その後の人生ごと、文楽の世界に引き込まれていく。

 
登場人物が、健が語る文楽の登場人物のごとく道徳的な描かれ方でなく、「それが人間なのだ」と、今を生きる馬鹿な人間として肯定して描かれているいる。文楽という底なしの地獄におちいって、その魔力を知ってしまった男たちと、彼らを取り巻く女たちのドタバタコメディ。

 
しかし、作者は業と欲にまみれてふらふらしながら、それでも何とか生きていく人間たちを優しく見守っている。 
笑いと涙の芸道青春小説。読後あなたは文楽の公演を見に行きたくなるでしょう! 

大阪・国立文楽劇場 http://www.ntj.jac.go.jp/bunraku.html 
東京・国立劇場 http://www.ntj.jac.go.jp/kokuritsu.html 

三浦しをん:1976年東京生まれ。2000年に「格闘する者に◯」でデビュー。
06年に「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を受賞。「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」エッセイ集に「あやつられ文楽鑑賞」「悶絶スパイラル」などがある。

『仏果を得ず』三浦しをん著 双葉文庫 600円+税 
★予告/9月エッセイ集『あやつられ文楽鑑賞』双葉文庫化決定!