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本書は、三弦、蒔絵、茶道、画工、根付、糸染、雛細工、髪結、活花、舞踊など、人並みの幸福には縁遠くても、芸をたのみに生きる江戸の女たちを描く芸術・芸道短編小説集。

島内景二氏の解説が素晴らしいので、引用させてください。
芸術や芸道は、何のためにあるのだろうか。私たちは、「今、ここ」という場所を生きている。だからこそ、「今、ここ」ではない場所への移動を、魂は求めてやまない。それが、「旅への誘い」である。(略)
芸術は、現実世界に束縛された人間が、普遍的な精神の高みに辿り着くための乗物であり、翼なのだ。よく言われることだが、人生は旅である。だからこそ、人生には、恋と戦いと芸術が必要なのだ。

この短編には「芸の翼」によって現実を乗り越えようとした人々の、さまざまな「人生との戦い方」が活写されている。
現実は過酷であり、不如意であり、峻烈なのだ。人間が望む通りの生き方は、大きな壁で塞がれてしまっている。だが、人間たちは諦めない。なぜなら、人間には「夢」を見る力があるからだ。
さまざまな夢が文様のように織り成されたもの。それが、乙川優三郎の描く芸道小説である。

深い余韻が残る芸道短編集だ。この本に出会えてよかった!

「逍遙の季節」乙川優三郎著   新潮文庫   514円(税込)

【その他の芸術・芸道本】
乙川優三郎「冬の標」文春文庫
葉室   麟「乾山晩愁」角川文庫
澤田ふじ子「闇の絵巻  長谷川等伯」上下   光文社時代小説文庫
澤田ふじ子「花篝   小説日本女流画人伝」中公文庫
松本清張「小説日本芸譚」新潮文庫
山本周五郎「虚空遍歴」上下   新潮文庫

追記
高田郁「みおつくし料理帖   夏天の虹」(ハルキ文庫刊)が出た。
前回、想い人との結婚を決意した澪に、更にとんでもない問題が!どうするお澪!