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音大のピアノ科を目指していた主人公の私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人(ながみねまさと)が語るシューマンの音楽に傾倒していく。
浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高校生が殺される。
その後、指を切断したはずの修人が外国でピアノを弾いていたという噂を聞く。

作曲家シューマンは自我の分裂にあまりに深く悩み、分身に脅かされ、引き裂かれて複数化した自己の調停に失敗し、分身を消すことができず、それが原因で深い精神の病に冒されていった人だそうだ。彼の周りには常に文学があった。さらに19世紀のブルジョワのステータスを示すピアノでも群を抜いていた。ついに彼は音楽を文学で、文学を音楽であらわそうとするが、シューマンの理想とするところまでは融和できず、音楽の影を追うシューマンと文学の影に惹かれるシューマンは互いの分身を憎み合うようになって自我が崩壊していく。

「シューマンの指」では最期に驚きの結末が用意されている。
ポストミステリーの書き手奥泉光に注目していきたい。

奥泉光の著作「我輩は猫である殺人事件」「グランド・ミステリー」「桑潟幸一のスタイリッシュな生活シリーズ」

最新刊『虫樹音楽集』集英社刊

奥泉光による音楽ミステリーの新しい挑戦。
虫への〈変身〉を夢見た伝説のサックス奏者。彼の行方を追い求めた先に〈私〉が見たのは─。カフカ『変身』を通奏低音にして蠱惑的な魅力を放つ、音楽ミステリーの新しい挑戦。もう一つの代表作。

その他の音楽ミステリー
「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」中山七里著
「四日間の奇蹟」浅倉卓弥著    いずれも 宝島文庫
※青柳いずみこの評伝「ドビュッシー  想念のエクトプラズム」中公文庫は興味深いです。