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江戸時代に参勤交代という制度があった。

諸大名は1年毎に江戸と自分の領地とを行来し、妻子は人質として江戸に常住しなければならず、さらに参勤交代に掛かる旅費や江戸の滞在費はすべて諸大名が負担しなければならなかった。
この制度の目的は、軍役奉仕とされるが、諸大名に出費を強いることでその勢力を削ぎ、幕府に対する謀反の抑制だった。

西美濃田名部郡(現・岐阜関ヶ原辺り)の旗本・蒔坂左京大夫の家臣で参勤交代の御供頭を務める小野寺弥九郎が屋敷を失火で焼亡し、病で逃げ遅れた弥九郎も焼死したため、惣領の小野寺一路が江戸より呼び戻され、父の後を継いで御供頭を務めることになる。

しかし、江戸で育った一路は参勤交代に関する諸事項をいっさい聞かされていなかった。焼けた屋敷跡から発見された父の行軍録をもとに、数人の協力者とともに江戸への参勤交代が始まった。
雪の和田峠超え、お殿様の急な病など、到着遅れの危機がせまるなか、一行は江戸まで歩みきることができるのか。

実に面白い時代小説である。単なる中山道を国許から江戸までの参勤交代の物語だが、今までになかった視点で武士を描いている。上下巻だが、次々と起こる事件の展開に頁をめくる手がもどかしい。映画化されればすばらしいロードムービーになることだろう。

浅田次郎『一路』上下 中央公論新社刊

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