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前回の「息吹」に載せる写真を考えていたときに思い出した、一昨年の夏、防水タイプの「写ルンです」を初めて使って撮影してみた写真たち…合わせて3台のレンズ付きフィルムを、先月、同時に現像に出しました。小樽のシーカヤック体験の他にも、その年、小学生になったばかりの甥っ子を初めての夏の海遊びに連れていこう!と、伊東のファミリー滞在向けのホテルに泊まったときにも使ったのです。 海やプールで写したのはもちろんですが、ちょうどその季節は海から朝陽が昇るところをホテルの温泉から見られたので…たとえカメラがお湯を被ってもレンズが湯気で曇っても、これならどうなってもいいから、とにかく海から昇る朝陽を、温泉につかりながら写してみたい!…と、半ば実験気分で防水タイプの「写ルンです」を湯船に持ち込んで、何枚もシャッターを切りました。

現像からあがってきたのは…もちろんレンズについた飛沫や結露や光の乱反射で、くっきりハレーションの入った写真たち。露光してから現像もせずに一年半も放置していたネガからのサービス版のカラープリントでは、発色も濁り、朝陽の眩しい明るさに、まわりはすっかり暗くトーンが落ちてしまっていて、あまり満足のいく結果ではなかったけれど。。。諦めきれずに、なかでもハレーションの綺麗に入ったカットをフィルム・スキャンしてみたら…サービスプリントでは出ていなかった美しい微妙なトーンも出てきました。

おもしろくなって、今度は、ふと思いついて、カラー・ネガをポジフィルムとしてスキャンしてみました。そうしたら、スキャナーのセンサーが感知するネガフィルムそのものの色合いが、意外におもしろいカラーバランスで出てきて、それを少しPhotoshopでいじっているうち、なんだか温泉のお湯のあたたかみに染まったような不思議なイメージに。

あらためて… 写真のネガとポジって、つくづくおもしろいなぁ♪♪ …と思っていた数日後のこと。年に10回ほど、スタジオ撮影や暗室作業を教えにいっている都内のとある高校の写真準備室の棚に、食指の動くステキな小物たちを発見! その日はたまたま、今年のボロ市散策で手に入れたタツノオトシゴのブローチを、何故か朝、ふと身につけて出てきていて… あら、これに呼ばれたのかしら、と妙に納得して、さっそくスナップ。

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この小物たちは、もう一人の写真の先生が撮影のモチーフ用に持って来られたものだとのこと、それらをちょっと拝借し、他にも準備室や暗室に転がっていたものたちを動員して、生徒に出す課題のフォトグラムの見本を作ってみたら、これまたおもしろくてハマってしまう。 今までも、もちろん授業用に何度かサンプル作っているのだけど…こんなにおもしろく感じられたのは、久しぶりのこと。こんなところでも、スナップ撮影と同様に、魅力的なモチーフとの、その日ならではの嗅覚と出会いが、やっぱり効いてくるんだなぁ。 

 

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最近、なかなか家を長時間あけられなくて、スナップ撮影にも集中して出かけにくく、ついついストレスが嵩じていたけれど…こんな風に、身近なところで思わぬ偶然に助けられ、その気になれば、いつでもどこでも写真を楽しむきっかけは転がっているんだ! と、あらためて、そのことを気づかせてくれたその日の導き、幸運に感謝しました。

写真は、物理的にも科学的にも、光学的にも、ポジとネガ、陰と陽とで成り立っているけれど… モノゴトの見方、発想のしかたも、知らず知らずのうちに、楽しみながら鍛えられているようです。

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このフォトグラムを作った1週間後、また同じ学校の暗室実習に出かけ、一日の授業が終わった帰り道に、ちょっとくたびれて喫茶店で一服したくなり、その前に何か本か雑誌をお供に…と隣の本屋さんに入りました。ちょうど氣になっていた文庫本や雑誌の候補があったのですが、残念ながら、それらはそこには在庫が無く…手持ち無沙汰に書棚の間を歩いていたら、コミックスのコーナーで、岡野玲子さんの「陰陽師 玉手匣1」に目が留りました。「陰陽師」は、夢枕獏さんの原作も、岡野さんのコミックスも、どちらも今まで部分的につまみ読みしたことがある程度だったのですが… 昨年の4月末に、たまたまとあるイベントで岡野さんのお話を聴く機会があり、ちょうど昨年1月にこの「陰陽師」続編の連載が再開されたいきさつや、隔月の連載が始まったばかりのころに東日本大震災が起こり…その後に執筆を続けるかどうか、そのとき感じられていたことや東北の雄勝法印神楽との縁などを語られていたのが心のどこかに残っていて…この「陰陽師 玉手匣1」を買ってみる氣になりました。

読み始めてみると…なんだか一昨年の秋ごろからの私自身の、現実の日々の生活とはまた別のところでなにか運勢の不思議な流れを感じている、そのこととも重ねあわせて受け取れるサインをたくさん見出して、内心、とても驚きながら読み進みました。

ふと、このタイトル「陰陽師(おんみょうじ)」も、気がつけば「陰」と「陽」だ、と陰陽五行思想に詳しい方からみれば、ごく当たり前のことに今更ながら思い至りました。巻末のダイジェストの解説には、陰陽道では常に方位である「空間」と日や歳や四季である「時間」は切り離さずに考え… 「空間」でいう「艮(うしとら)」は丑と寅の間である東北を指し、「時」の流れでは「陰」の氣の極まる丑と「陽」の氣の始まる寅の間、歳でいえば旧暦の12月の丑の月と新年の寅の月の間、四季では冬と春の間… とあり、まさに、このネガとポジのスキャンやフォトグラムを楽しんでいたのはつい先日の旧正月の前のころ、この原稿を掲載しようとしているのは、ちょうど大寒から立春に向かうとき… なんだか、不思議な符号に、ビックリしています。

現実には、冬の寒さの一番厳しい今ごろですが…立春を迎え、少しずつでも、復興の日々にも原発事故の収束にも、春の兆しが感じられますように。。。 
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